カナダドライブ横断(1)
「カナダは広い」ということは誰でも知っています。 私でも知っております。 しかしトラベル・ライターは、「地上を車で旅してみなければ、本当にその国に触れたとは言えない」と書いていますし、「大陸横断は、一度はやってみる値打ちがある」と友人たちもすすめます。 職も無いことだし、あるのは時間だけですから、生涯最初で最後の自動車横断旅行に踏みきって、その広さを実感してみることにしました。
世界地図でみると、イタリアは長靴、東南アジアは象の首のようにみえることは、小さな子供でもわかりますが、北米大陸は、私には、頭でっかちの上に冠をかぶせたようにみえるのです。 その左の耳たぶ辺りから、右の耳のつけねの辺りまで、目線に沿って、走ってみることにしました。
出発点は、日本海流が沖を流れる、ブリティッシュコロンビア州のバンクーバーです。 しかし、私は、カナダに来るまでは、バンクーバーとバンクーバー島が全く別だということは知りませんでした。 30年近くたった今でも、一瞬息をのみこんで、「エーと、あれはビクトリア島ではなかった、バンクーバー島でした」と言い直すといった具合で、正解がすらすら出てきません。
そこで、本土のバンクーバーを離れて、バンクーバー島行きの連絡船に乗り、西南へ九十分。 瀬戸内海のような小島の浮かぶ平穏な海を滑って、州都ビクトリアの郊外に到着します。 このバンクーバー島は、台湾ぐらいの大きさだそうですが、南北に500キロ近くある、細長い島です。 人口は増えたといっても、まだ60万あまり。 年を取ったてから住むのに一番いい所が天国なら、その次にいい所は、ビクトリアのあるバンクーバー島だそうですから、ぼつぼつ下見をしておいてもよいかもしれません。 ということで、一度その島へ渡って、そこを出発点として、カナダの東を目指すことにしました。
カナダを横断するトランスカナダ・ハイウェイは、カーブや高低のある所で、制限速度90キロ。 そこを100キロから120キロで走るのですが、それでも他のドライバーからみればのろのろ運転。 あっという間に、後に10台ぐらいの車が数珠つなぎになります。 追い越し可能な所にくると、その10台がビュンビュン追い抜いて行き、たちまち見えなくなります。 それもポルシェのような高速車ならともかく、モーターボートを引張ったミニバンや、トレーラーハウスを引張るピックアップ。 「グォーッ」と轟音と風圧を浴びせて追い越して行く大型牽引トラックの行列。 その大型トラック1台のタイヤの数をかぞえたら、26ありました。
平原州では、飛行場の滑走路のような道が地平線まで続きます。 制限速度は110キロ。 ところが地平線は行けども行けども先へ延びて消えません。 それでも、時折一直線のハイウェイがカーブする所があります。 地形的にはカーブの必要はないのでしょうが、ドライバーの心理を考えて、土木工学の設計者が道に変化を与えるのでしょう。 運転する者にとっても、ちょっと一息つける節目です。 (つづく)
